皆様こんにちは。ライトサイクル店長の酒井です。
年末年始でばたばたしていて、ずいぶんと期間があきましたが、
久々のブログ更新となりました。どうもすいません。
さて、前回と前々回はマスターチューンでの4通りの方法のうち
技術的には簡単でも、あまり好ましくない2通りのやり方を説明させてもらいました。
今回は当店で実際に行っているインジェクションチューニング方法を
ご紹介したいと思います。
2007年式以降の酸素センサーが装着されているモデルに使う方法です。
まとめますと、
設定したい空燃比(ガソリンと空気の混合比)を、エンジン回転数、
スロットルの開度などの状況に応じて細かく設定し、
実際にその混合比になるように、数値を人間が調整しながらセッティング
する方法。同時にV-TUNEによる酸素センサー制御を併用する方法です。
(オープンループを中心としながら、クローズドループも併用する方法。)
この方法は、調整に手間がかかること、シャシーダイナモ設備、
正確な空燃比測定器が必要になることが難点ですが、
一台一台のバイクに最適なセッティングを出すことが可能で、
馬力・トルクアップとともに、エンジンのオーバーヒート、
無駄な燃費低下の防止にも最も優れている方法です。
手順としては、(えらい長くなります。)
①過去のチューニングデーターの中で、最も仕様の近いデーターを
ECM(バイクのコンピューター)に入れる。
ない場合は、最も近いメーカー提供のベースデーターを入れます。
このとき、お客様の希望するアイドリング回転数の設定も行います。
前に説明したように、この段階のデーターでは、まだほとんど使い物に
ならない状態です。全く同じバイクで同じマフラーなどの仕様でも
実際に測定していくと、一台一台、結構な個体差があるためです。
ほんと困ったモンです。
ちなみに、上の馬力・トルク測定グラフですが、
他店様で、バイクの仕様から推測して製作したベースデーターを入れたと
思われる車両の測定結果です。
1500回転~2000回転近辺で、
トルク曲線がかなり低下して谷ができているのがわかります。
お客様も低速でのギクシャク感を感じるとのことです。
②実際にこのバイクをシャシダイナモ上で走らせ、空燃比がずれている
アクセル開度、マニホールドの負圧、エンジン回転を特定してみます。
空燃比を色々な条件で測定してみたところ、
やはり1500回転~2000回転までのガソリン噴射量が
かなり不足していることがわかります。(山が高くなっているのが不足箇所)
さきほどのトルクの落ち込みとぴたりと一致し、これが原因だとよくわかります。
逆に、3500回転以上ではガソリン噴射が多すぎるようです。
(グラフ線が下がってきているところが、濃すぎる状態を表しています。)
これですと、無駄な噴射により燃費がかなり低下する原因となります。
お客様によるとプラグがくすぶりぎみになり、やはり燃費がかなり悪化したと
いうことです。
③調整がずれている箇所が特定できましたので、このあたりを中心に
実際にチューニングしていきます。
様々なアクセルの開度とエンジン回転数、それぞれのギヤで燃料噴射を
測定・調整をしていき、ターゲットとする空燃比に実際になるようにしていきます。
前後のシリンダーで別々にこの作業を行いますので、大変な回数の作業を行う
ことになります。
手間がかかることや色々な装置が必要な点で、当店でもよく扱う他のフルコン
サンダーマックスやツインテックよりもかなりセッティングは大変です。
④ターゲットとする空燃比に実際のエンジン内の空燃比が近づいてきたら
パソコン上で調整した箇所を上書きし、更新したデーターを
ECMに入れなおします。そして、またシャシダイナモで走らせ測定。
まだ微妙にずれている箇所を特定します。
⑤あとは、ずれている箇所がなくなるまで、
ひたすら ③~④の手順を繰り返します。
エンジン温度も常に測定し、それを考慮しながらの作業になります。
ちなみに、エンジンの温度上昇を測定していると、お客様が使用している
エンジンオイルの種類によってかなり差が出てくることがわかります。
私も愛用しているモチュールなどの高性能化学合成オイルと、レブテックや
ハーレー純正の鉱物油では明らかにオーバーヒートするタイミングが違って
きます。モチュール、やはり伊達ではありません。おすすめです。
さて、下の画像はチューニング前と、当店でチューニングを
行ったあとのトルク比較です。
チューニング前の低速でのトルクの落ち込みがなくなったのがわかります。
⑥エンジンに負担がかからない一部の領域は、酸素センサー制御を利用し、
燃費向上をはかります。
⑦アクセルを急激に開いた時は、最もガソリンを必要とするため
ガソリン噴射量の増量を調整します。
(キャブで言うと加速ポンプ調整)
⑧逆に急激にアクセルを閉じた時の燃料減量値を調整。
⑨暖機運転~アイドリングが下がりきるまでの領域を調整する。
⑩アフターファイアー(バックファイアー)が出やすいマフラーは
走りのセッティングを損なわない範囲で、それを少なくするよう
調整します。
⑪この時点で一度、馬力・トルクの測定を行います。
⑫点火時期を調整。
全体の点火時期を調整します。
シャシダイの電気負荷装置を使い、ノッキングが出る領域は
点火時期を少しづつ遅らせて対策していきます。
⑬シャシーダイナモで再度、馬力・トルク測定を行い結果を確認。
おもわしくない部分がある場合は再度見直していきます。
⑭全体の空燃比が狙ったとおりの数値に確実になっているか最終確認。
⑮いったんエンジンを冷やし、暖機運転をはじめます。
実際に路上をテスト走行し、体感的に問題がないかを確認。
(シャシダイナモはチューニングに必要不可欠な設備ですが、
人間の感覚も非常に大事です。)
その他、細かく言いますと、上記以外の項目も調整していますが、
説明にきりがないためここでは省略させてもらいます。
ちなみに、酸素センサーがない年式のバイクの場合、、
全部、人間が調整することになり、もう少し手間が増えます。
いわゆる、酸素センサー制御に頼らない完全なオープンループ設定です。
理屈っぽい話ばかりで恐縮です。
しかし、もう少し頑張って次回は、
さらに当店こだわりの細かなチューニング用の道具などをご紹介
していきたいと思います。