過去のブログでもしばしばお話にでてきました、
ハーレー純正コンピューターチューナー(インジェクションチューナー)
スクリーミンイーグル・プロ スーパーチューナー。
最近、この商品でデーター書き換えを行っているお客様が多くなっており
当店へのご質問も多数いただいております。
その中でもっとも多いものが、以下の2つです。
①”シャシダイナモを使ったセッティングを行わず、
マフラーやエアクリーナーの仕様から選択したハーレー提供の
ベースデーターや、それを多少いじったデータを入れただけで
セッティングは出るのか?”
②”スマートチューンという学習機能があるから走っているうちに
セッティングは自然と合ってくるのか?”
あくまでも当店で行った様々なテストデーターから考えたものですが、
結論的には、①、②ともに残念ながら正確なセッティングをだすことは
現実的にはできないと言ってもいいかと思います。
では、そのように考える理由について、実際にスーパーチューナーの特性、
性能を検証する3つのテスト行ってご紹介していきたいと思います。
(3つのテスト内容)
①スーパーチューナー内にあるメーカーが用意したベースデーターを
そのままバイクのコンピューターに入れてみるとどのようになるか。
②シャシダイナモ不要のうたい文句もある、オートチューン機能(学習機能)
スマートチューンの効果がどれくらいのものかを調べる。
③当店で行っている、チューニング方法でセッティングした場合には
どのようになるか。(シャシーダイナモをもちろん使用します。)
内容が長くなるため、今回は①のテスト
まず、スーパーチューナー内にあるメーカーが用意したベースデーターを
当店のテストバイクにそのまま入れてみるとどのようになるか。
ということを検証してみます。
テスト車両は2008年式FXDLで、バイクの仕様は以下のようなものです。
・スクリーミンステージ2キット装着
(1690ccにボアアップ、SE255カム)
・スクリーミンスリップオンマフラー
・スクリーミン エアクリナーハイフローキット
まず、スーパーチューナー内にあるメーカー提供のベースデーターのなかに
上記の仕様にぴったり合うものがありましたので、それを選択します。
早速シャシダイナモで走行させて、
燃料噴射の状況が実際にどのようになっているか測定してみます。
上のグラフは、エンジンの回転数に対しエアフューエルレシオ(ガソリンと空気の
混合比)がどのように推移しているかを測定したデータの一部です。
ちなみにこれらはフロントシリンダーの測定値になります。
アクセルの開度は一定の状態にキープしています。
左がアクセル開度10%(ギヤは2速),右がアクセル開度が25%(ギヤ3速)です。
まず皆様もすぐに気づかれるのは、グラフの青線が非常に激しく上下降している
ということだと思います。
セッティングによっては、高回転になるに従いやや下に下がっていくよう
設定をする場合もありますが、このグラフの場合、規則的な上下降ではなく
単に乱れた上下降になっています。
つまり、燃料噴射(混合比)が回転数によって非常にバラついていることを
表しています。
また、赤い点線は混合比 13.5 をあらわす線で、通常この程度のアクセル開度で
あれば、このくらいの混合比が理想的とされています。
それに対して、実際の青い線はかなり低いところをうろついており、
数字でいいますと、低いところで10.0強、一部13.0くらいに上昇しますが、
平均すると12.0くらいになっているのがわかります。
数字が小さいほどガソリンが濃い状態を表しますので、理想数値13.5に
くらべて、かなり濃く、無駄にガソリンを噴射しているということになります。
下のグラフは、アクセル開度2%、5%、7%、10%と順番に、全開の100%まで、
細かく測定した混合比曲線を重ねたものです。
このグラフでも同じように、混合比があらゆるアクセル開度で激しく上下降
しており、基本的にかなりガソリンが濃く噴射されていることが読み取れます。
全般的に2000回転を頂点にいったんガソリンが薄くなり、そこから急激に濃くなる
という状態になっています。
以上のような状態ですと、間違いなく言えることは、
非常に燃費の悪いバイクになるということです。
セッティングが正確に出ていない場合の典型的な症状のひとつです。
また、実際にこの状態のバイクにのってみて感じた私の不満点は
以下のようなものです。
・アイドリングが安定せずバラついていしまう。
・アクセルをあおった時の反応が鈍く、鋭く吹けあがらない。
・中高速の伸びにいまひとつの感がある。
・低速で走ったときにややギクシャクした感じがある。
(このような状態が起こる原因)
やはり、メーカー提供のベースデータと、このFXDLの実際の状態とでは
ずれがでてしまっていることが原因です。
もっとも大きな要因としては、エンジンに入ってくる空気の量の予測値が、
実際のものと、ベースデーターに入っている数値とで大きく違っているためです。
このエンジンに入ってくる空気の量に関しては、非常に大切な要素ですので
次回以降でまた説明させていただきます。
今回使用したベースデーターは、テスト車両の仕様と完全に一致したベストな
ものでしたが、それでもこのような結果になりました。
実際には、マフラーがバンス&ハインズであったり、クロームワークスであったりと
お客様のバイクの仕様は様々です。
残念ながら、スーパーチューナーのベースデーターにはそこまで細かい仕様に
合わせたものは存在しません。
そのため、マフラーがスクリーミン以外であった場合などは、排気特性が異なるため
さらにセッティングのずれが大きくなる可能性が高くなります。
やはり、ただデーターを入れただけで正しいセッティングが出るほど
簡単ではありません。
さて、今回はここまでですが、次回以降でオートチューン機能の実力や
当店でのスーパーチューナーセッティングでの測定結果をお知らせしたいと
思います!