さて、前回のブログでスーパーチューナーでチューニングする際に
ベースデーターをただインストールした場合の問題点をご紹介しましたが、
今回は、その次のテストをやってみます。
(テスト内容)
スーパーチューナーに備わっている、オートチューン機能(自己学習機能)である
スマートチューンにはどれくらいの効果があるのか調べてみます。
テスト車両は前回同様、08年FXDL、細かい仕様は前回のブログをご参照ください。
(スマートチューンとは)
まずはじめに、この機能についてご説明しますと、
シャシダイナモがない状況の場合に、実際にバイクを路上走行させることで
コンピューターに入れたベースデーターのずれている箇所を修正していく
という機能です。(シャシダイナモを使用すれば効率的な作業が可能です。)
ここで誤解されている場合が多いのは、ただ走行していれば学習機能が
働き、自動的にデータが修正されると思われている方が多いのですが、
それはありませ。
走ってさえいれば自然にセッティング合ってくるものでは全くないということです。
下で説明するスマートチューンを働かせる手順をすべて行ってはじめて
データが修正されることになります。
(スマートチューンのやり方)
①まずモジュール(VCI)と呼ばれるスーパーチューナーの本体をバイクに接続し
ハンドルなどに固定します。
②スーパーチューナーのソフトを使い、スマートチューン記録モードに設定します。
③実際にバイクを走らせ、モジュールのスイッチを押して、
走行データーをモジュールに記録させます。
記録できる時間は1回につき15分間です。
モジュールにはこの15分間の走行記録を複数回蓄積させることが可能です。
④走行記録の蓄積されたモジュールをスーパーチューナーの入った
パソコンに接続し読み込み、もともとバイクに入れていたベースデーターに
上書き更新を行います。
更新が終了したベースデータを再度バイク側のコンピュータに入れ込みます。
⑤そして、またバイクを走らせ②から④までの手順をひたすら繰り返します。
(スマートチューンのもつ問題点)
①スマートチューンに修正箇所を認識させるためには、
走行するうえでコツが必要になります。
様々なエンジン回転・ギヤで少なくとも5秒間~10秒間アクセルを一定に
保って走行することではじめてスマートチューンが車両の状況を認識するため、
たとえば低速域に修正をかけたい場合は一般道でこれを行う必要があります。
よっぽどすいている道でないと、意外とこれが難しいんです。
(側道から割り込んでくる無礼者などに遭遇すると、苦労が水の泡です。)
②スマートチューンでの修正には大変時間がかかるわりに、
狭い範囲でしか修正が入らない。
手間のかかるスマートチューンを行いながら実走行しても修正はほんのちょっと
づつしか行われないのが確認できます。
この先で、実際にどの程度の数値補正が入ったかご紹介します。
(実際にどれだけの修正が入ったか。測定結果)
当店のテスト車両で、できるだけ修正が入るように意識しながら合計500km
走行して、その間ひたすらスマートチューン校正をかけ続けてみました。
その結果が下記の画像左側です。水色に変化している部分がスマートチューンで
修正の入った箇所です。
右側はスマートチューンを行う前のベースデータの数値です。
スマートチューン後 スマートチューン前(ベースデータそのまま)
アクセル開度をたくさんキープできた箇所にしか修正が入っていません。
細かいですが、ベースデーターの数字からどれくらい変化したかを見てみると、
ほんのちょっとの数値しかみられません。
この程度ですと噴射量の変化は非常に乏しいものになります。
ここでは割愛しますが、実際に噴射特性に変化は見られませんでした。
もちろん、今回は500kmの走行でしたが、これを3000kmとか5000kmとかまで
ひたすら繰り返せば、効果は増していくのでしょうが、相当な手間になりますし、
その間、正確でないセッティングのまま走行しなければならないのも痛い点です。
ちなみに下の画像は当店で行うシャシダイナモと、高性能空燃比測定器を使用した、
スマートチューンに頼らないオリジナルチューニングを行った場合のものです。
ほとんどの箇所で必要な修正を入れています。また、ベースデーターの数値との
変化幅がスマートチューンに比べて大きいことがわかります。
正確なセッティングを出すにはこれくらいの修正が必要になります。
最後に、スマートチューン前後でのトルク・馬力出力測定比較を行いました。
ほとんど全域で効果が見られません。500kmがんばったんですが残念です。
赤線・スマートチューン前 青線・スマートチューン後
さて次回は、当店で実際に行うスーパーチューナーのセッティング方法を
ご紹介したいと思います。